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知識 カテゴリー: オルの記録 - 幼少期 |
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- 説明: 「君の名前は?行き場はあるのか?」 彼は飢えて瀕死状態だった私に手を差し伸べてこう言った。その瞬間は今も鮮明に覚えている。雨水が目元を濡らしたあの日、彼の声は闇に差し込む一筋の光のようだった。 だけど、私は答えなかった。いや、答えることができなかった。名前というものがどれほど無意味なものか気付いたからだ。戦争は私から全てを奪った。名前も、家族も、未来も。誰かが私の名前を呼んでくれたのがいつだったか、まったく思い出せない。行き場?そんなものは最初からなかった。世界が崩壊したというのに、一体どこへ行けるというのだろう。 それでも彼は我慢強く私の返事を待ってくれた。居心地が悪かったけど、妙に安心もした。誰かが私の答えを求めているという事実が、久しぶりに、あまりにも久しぶりに自分を人間らしく感じさせてくれた。だが、私は口を噤んで何も言わなかった。声が出なくなってしまったのだろうか?代わりに足元に散らばった石をじっと見つめながら、彼が去るのを待った。他の人のように、ただ私を通り過ぎていくことを願って。しかし彼が立ち去ることはなかった。それどころか、再び私に話しかけてくれた。 「大丈夫さ。無理に答えなくてもいいんだ。」 アトラクシオン:オル 取得元: - オルの記録 #1:救いの手 | |